食の歳時記|祭り
押し寿司
ハレの日を彩る、家庭的な寿司
金沢では、祭りや婚礼などの“ハレ”の日に、各家庭で押し寿司を作る慣わしがある。もともとは、神様に豊作や海の安全を祈願するために供えた米のお下がりと、塩をした魚を箱に入れて押し寿司にしてみんなで分け合って食べたことが始まりと考えられている。
祭りの当日に九谷焼などの大皿に盛られる押し寿司は、祭りの主役にふさわしい存在感。祭りの合間につまむのはもちろん、宴席で親戚縁者にふるまわれる。材料や作り方に大差はないが、それぞれの家庭の味というべき違いがある。
春祭りにはコダイやイワシ、アジ、秋祭りにはサバやアジ、シイラなどの魚を使う。押し枠に経木を敷き、酢で締めた魚をのせ、寿司飯を広げ、その上に紺ノリ(紺色に染めたエゴノリ)、桜エビ、ショウガをのせて経木をあてる。これを繰り返して段にし、押しをして一晩寝かせる。
金沢の押し寿司はにぎりやちらしと違い、一晩押してなじませることで、魚とご飯がしっかりと互いの味を引き出している。味だけでなく、真っ白な酢飯とエビの紅、ノリの青色、魚の切り身の色が美しく調和し食欲をそそる。
金沢では四角い木の箱型に経木で仕切りながらつくる押し寿司だが、県内には地域ごとに違った調理法があり、加賀では一つずつ柿の葉で包んだ「柿の葉寿司」が有名。また、押し寿司は時代に合わせてアレンジされ、笹にくるまれた笹寿司はスーパーやコンビニで容易に入手できるほか、押し寿司のルーツ・箱寿司にちなんだサケとタイの押し寿司「御贄(おにえ)ずし」という駅弁は観光客に人気を得ている。
問い合わせ先
市内スーパー・デパート・惣菜店など