食の歳時記|秋
加賀れんこん蓮蒸し
加賀れんこんのもっちり感を味わう椀物
「はす蒸し」はれんこんをすりおろして具材と混ぜ合わせて蒸した料理で、金沢では加賀野菜の一つ、加賀れんこんを使ったものが最もポピュラー。このれんこんはでんぷん質が多く、「餅れんこん」の異名を持つほど、すりおろすと粘りがぐっと増す。この粘り気を最も活かした調理法といえるのがはす蒸しで、加賀料理の定番にも挙げられる。
ややずんぐりとした加賀れんこんは4つほどの節からなるが、はす蒸しに最も適するのは頭のひと節目。それを手早くすりおろして下味を付け、ヒラメやタイなどの季節の白身魚、エビ、銀杏の上に、ふわりと蓋をするようにかぶせて蒸し上げ、仕上げにあんをかける。蒸すことででんぷんが糊化するため、つなぎを必要としない。
蒸されたれんこんはまるで熱々の餅のような食感となり、口中にからみつくような粘りとほんのりとした甘みがある。魚のうまみとも見事に調和し、心温まるようなやさしい味だ。
加賀料理は郷土料理から発展したものといわれており、はす蒸しも元来は家庭で来客用のおもてなし料理としてつくられていたようだ。家庭によっては、魚をウナギやアナゴの蒲焼きにしたり、鶏肉を使ってつくることもある。
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