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食の歳時記

食の歳時記|婚礼

鯛の唐蒸し

婚礼にふさわしい、豪華かつ贅沢な加賀料理の代表格

鯛の唐蒸し

頭を付けたまま鯛を背開きにし、ニンジン、ゴボウ、ギンナン、キクラゲなどの具を加えたおからをたっぷりと詰めて蒸した「鯛の唐蒸し」は加賀料理の代表格で、特に婚礼時のハレの料理として知られる。色鮮やかな九谷の大皿に盛られ、青竹の箸をつき立てたその姿は、加賀百万石を象徴する豪快さと気品に溢れている。なぜこういう形になったかはっきりとは分かっていないが、中華料理から発展した長崎の「卓袱(しっぽく)料理」の影響を受けたという説もある。
かつては婚礼時に婿方の家庭で調理するのが習わしだった。婚礼の前日に嫁方から贈られた大鯛を、背から開いて水洗いした後塩漬けし、翌日おからを入れて蒸し上げる。盛り付けは雄雌2匹を腹合わせにした「にらみ鯛」。子宝に恵まれるようにとの願いから腹合わせにし、根菜類の具を入れた栄養豊富なおからを詰めるのも精をつけるためという。宴席で披露された後は、上身のみを客人に取り分け、骨の下身は祝言の下働きをしてくれた人や近所の人に配り、その労をねぎらった。
しかしここ最近の婚礼ではやや影が薄く、市内ホテルの婚礼料理では小さな切り身だけが供されることが多い。その一方で、伝統を大切にして受け継いでいる料亭もいくつかある。そのうちの一軒では、仲居さんが大きな唐蒸しが乗った皿を持ち、会場を一周するという趣向をとっている。来客からは驚きと感動の声が漏れ、次々とシャッターが切られる。その後唐蒸しは、女将や仲居さんの鮮やかな手さばきで取り分けられるが、昔と違い上身も下身もその場ですべて招待客に供される。

問い合わせ先

市内料亭・割烹など


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