大野醤油

醤油の香りが漂う港町の“うまくち”

醤油

 金沢港に隣接し、潮の香りに混じってかすかな醤油の香りが漂う大野は、昔ながらの醸造蔵が建ち並び、なかには蔵を改装したギャラリーや味噌や醤油のおみやげが買える場所に加え、醤油の味比べや予約すれば工場見学ができる蔵もある。醤油ソフトは大人気でこれを目当てに大野を訪れる人も多い。

 

 大野で醤油造りが始まったのは今から400年ほど前のこと。元和年間(1615~1624)に大野の町人直江屋伊兵衛が加賀藩三代藩主前田利常の命を奉じ、醤油発祥の地・紀州湯浅に学び、戻り伝えたといわれている。

 大野は白山水系の良質な水が豊富に湧くうえ、北前船の寄港地でもあり小麦や大豆、能登の塩など原料の調達も容易だったという利便性や、湿潤な気候が醗酵に適しているなど、醤油醸造の好条件が備わっており、醤油産地として屈指の発展を遂げることとなった。
大野醤油は関東とも関西とも違った特徴を持つ。その色合いは濃口と淡口の中間といわれる。味はまろやかでコクがあり、さらに甘み(うまみと読む)があるために、「うまくち醤油」とも称される。また金沢は江戸期には大消費地でもあり、五大名産地(江戸の野田・銚子、上方の竜野・小豆島、加賀の大野)のひとつに数えられるようになった。

 大野醤油には独特の伝統製法がある。通常の醗酵過程途中で米麹を加えてさらに醗酵を進めると、まろやかな米の甘みをもつ醤油が出来上がる。あまりの手間とコスト高のため近年途絶えていたが、先年、伝説の甘口(うまくち)醤油「大野紫」として復活した。
 また、原点に立ち帰るべく巨大な木槽による有機醤油の生産も始まり、こちらは「木桶紫」として発売が開始された。

 加賀料理を支える大野醤油を是非ご賞味ください。